Title Of Mine

拗らせ。

まほろば○△

恋人が、終電までの一時間ちょっとしか会えないのに態々豪雨の中うちに来た。

うちに入るなり早々抱きしめられた、触れる箇所は全てひんやりしていて鬱転を身体で表した痛々しい姿にこちらまで心が痛くなってしまった。

上司からのセクハラに悩ませられている恋人は僕の中で泣いていた。僕は何も言えずにただ抱きしめるだけ。

 

どうしようもなく似た者同士だ。僕が女性だったら同じような心象になっているだろう。自己承認欲求を満たしたい心を常に持ってはいても対価の無いスキンシップには酷くダメージを受けるのだろう。そもそも僕と恋人との関係に意味があるのかというのは無しにしても。

 

いつも駅まで15分程度の道を送っていくのだが、今日はしなかった。雨というだけで気が滅入る自分を心底嫌いになった。きっと意味は無くても行くべきだったんだととても悔やんだ。晩年の己の人生を思い返し苦悩する作家のような気持ちで恋人に「ごめん」と連絡をいれると、「彼氏なら怒っていた」と。

 

僕は「彼氏」ではないし彼女も「彼女」じゃない。そもそも彼氏彼女とはなんなのだろうか。付き合っていてもその関係には当てられない僕はどうあがいても「悪者」なんだろうと常々考える。結婚への確約のワードなのだろうか。恋人は永遠とかずっとみたいな言葉は嫌いだと時々言う、その癖して「彼氏」と連呼する。それは僕との関係を適度に保つための口実なのだろうか、そんなこと聞いたところで心壊するのは僕なのだからどうでもいいのだけれど。

 

チラつかせるように「彼氏」と言う恋人に僕はどこまでも踊らされている。彼氏彼女とか男女とか後輩先輩とか全て考えないで二人だけになりたいのに、それだけでいいのに。